「不自然な要素が満載」の設計会社作成の工事見積書〜「損害額の根拠」と書面ベースの戦い〜|法曹界の謎6
建築裁判に関わり、意見書作成などのコンサルティング業務を行い、大小80件以上の裁判に関わりました。
損害賠償請求における重要なポイント
・原告が主張する因果関係・ストーリー
・損害額の根拠となる書証:工事請負契約書や工事見積書
世の中には、様々な裁判がありますが「損害賠償裁判」においては、「損害額の根拠」が非常に重要です。
裁判官の姿勢は、
「損害賠償を主張するのは結構ですが、
その金額の根拠が明白で
なければ、論外です。」
このような姿勢であり、「損害の根拠」が金科玉条のように扱われます。
建築裁判を通して、初めて裁判所を訪問する機会を得ました。
様々な地方裁判所を訪問しましたが、東京地方裁判所は規模が別格で、内部空間は天井が非常に高いです。
裁判の主張も様々あると考えますが、「損害額の根拠」が不可欠であることは、一般人には馴染みが少ないです。
裁判の場では、「侃侃諤諤の論争」が行われると思っていましたが、原告代理人と被告代理人の間では、
「原告の損害賠償の 主張は、この書面です。」
「被告の反論は、この書面です。」
このように書面でのやりとりとなり、
裁判官は、
「それぞれの主張と反論が、揃いましたね。
それでは、被告の反論に対して、
原告は主張することがありますか?」
このように、尋ねて裁判を進行させます。
すると、原告代理人または被告代理人は、
「あります。
次回、準備書面を提出します。」
当然、反論の応酬となり、引き下がることはありません。
そして、「反論の反論」などの書面作成に向けて、裁判官は、
「そうですか。
それでは、次回の期日は〜月〜日はいかが?」
「はい、結構です。」
「当方も結構です。」
「それでは、次回期日は
A月B日とします。
その一週間前までに
準備書面を提出してください。
それでは、これで終わります。」
このような感じで、淡々と粛々と、進むのが裁判です。
中には、激論が交わされる裁判もあるのかもしれませんが、概ね、このような感じで「書類ベース」で進行します。
筆者の率直な意見としては、
「あまりに書面ベースなので、
対面して話す意味はないのでは?」
このように「思わざるを得ない」裁判もあります。
そして、大多数の建築裁判では、原告は「損害賠償請求額の根拠」として、工事見積書を提出します。
原告代理人は、
「この工事見積書の
金額が原告の「見込まれる」損害です!」
このように意気揚々と主張することが多いです。
この工事見積書が「実際に工事し、支払いを行った」見積書であれば、一通りの論理は通ります。
ところが、数多くの建築裁判では「見込まれる」損害額が、工事見積書として提出されます。
そして、極めて多くの場合で、これらの工事見積書は設計会社・設計事務所が作成しています。
おそらく、設計会社は、建物の調査の一環として、あるいは、工事見積書作成を業務として請け負っています。
そして、工事見積書は、「工事をする能力も資格もない」設計会社作成ですが、それなりによく出来ています。
設計会社には、様々な工事見積書の提出を建設会社から受けて、工事見積書のデータがストックされています。
そのため、建設会社作成の見積書をベースとすれば、「体裁が整った見積書」を作成することが可能です。
ところが、「一見よく出来ている」この「設計会社作成の工事見積書」は、要注意です。
中には、「設計会社作成の工事見積書」内の全ての項目を念入りにチェックしていると、
「この工事は、
なんだろう?」
よく分からない工事が含まれていることもあります。
さらに、時々見かけるのは、
「この工事は、
一体どうやって施工するのだろう?」
建物の規模・計画地・用途を考えると、「明らかに不可能な工事」が含まれていることがあります。
そして、その「明らかに不可能な工事」に、かなり多額の費用が見込まれていることが多いです。
これは、工事見積書を作成した設計会社が、
「金額を水増ししなければ
ならないから・・・
大きな部材で、過大な費用を
見込んで入れておけば良いか・・・」
このような意図で、「適当」ではなく「テキトー」に工事見積書を作成していると思われます。
裁判所は、まだ実行されていない「予定」の工事見積書を証拠・書証として提出されたら、しっかりと精査して、訴訟指揮をとるべきと考えます。
株式会社YDS建築研究所
東京都千代田区神田神保町三丁目2番地 高橋ビル4F
TEL:03-6272-5572
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