「不自然な要素が満載」の設計会社作成の工事見積書〜「損害額の根拠」と書面ベースの戦い〜|法曹界の謎6

query_builder 2025/08/04
コンサルティング
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建築裁判に関わり、意見書作成などのコンサルティング業務を行い、大小80件以上の裁判に関わりました。

損害賠償請求における重要なポイント

・原告が主張する因果関係・ストーリー

・損害額の根拠となる書証:工事請負契約書や工事見積書


世の中には、様々な裁判がありますが「損害賠償裁判」においては、「損害額の根拠」が非常に重要です。

裁判官の姿勢は、

「損害賠償を主張するのは結構ですが、

その金額の根拠が明白で
なければ、論外です。」

このような姿勢であり、「損害の根拠」が金科玉条のように扱われます。

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建築裁判を通して、初めて裁判所を訪問する機会を得ました。

様々な地方裁判所を訪問しましたが、東京地方裁判所は規模が別格で、内部空間は天井が非常に高いです。

裁判の主張も様々あると考えますが、「損害額の根拠」が不可欠であることは、一般人には馴染みが少ないです。

裁判の場では、「侃侃諤諤の論争」が行われると思っていましたが、原告代理人と被告代理人の間では、

「原告の損害賠償の 主張は、この書面です。」

「被告の反論は、この書面です。」

このように書面でのやりとりとなり、

裁判官は、

「それぞれの主張と反論が、揃いましたね。

それでは、被告の反論に対して、
原告は主張することがありますか?」

このように、尋ねて裁判を進行させます。


すると、原告代理人または被告代理人は、

「あります。
次回、準備書面を提出します。」

当然、反論の応酬となり、引き下がることはありません。

そして、「反論の反論」などの書面作成に向けて、裁判官は、

「そうですか。
それでは、次回の期日は〜月〜日はいかが?」

「はい、結構です。」

「当方も結構です。」

「それでは、次回期日は
A月B日とします。

その一週間前までに
準備書面を提出してください。

それでは、これで終わります。」


このような感じで、淡々と粛々と、進むのが裁判です。

中には、激論が交わされる裁判もあるのかもしれませんが、概ね、このような感じで「書類ベース」で進行します。

筆者の率直な意見としては、

「あまりに書面ベースなので、
対面して話す意味はないのでは?」

このように「思わざるを得ない」裁判もあります。

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そして、大多数の建築裁判では、原告は「損害賠償請求額の根拠」として、工事見積書を提出します。

原告代理人は、

「この工事見積書の
金額が原告の「見込まれる」損害です!」

このように意気揚々と主張することが多いです。

この工事見積書が「実際に工事し、支払いを行った」見積書であれば、一通りの論理は通ります。

ところが、数多くの建築裁判では「見込まれる」損害額が、工事見積書として提出されます。

そして、極めて多くの場合で、これらの工事見積書は設計会社・設計事務所が作成しています。

おそらく、設計会社は、建物の調査の一環として、あるいは、工事見積書作成を業務として請け負っています。

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そして、工事見積書は、「工事をする能力も資格もない」設計会社作成ですが、それなりによく出来ています。

設計会社には、様々な工事見積書の提出を建設会社から受けて、工事見積書のデータがストックされています。

そのため、建設会社作成の見積書をベースとすれば、「体裁が整った見積書」を作成することが可能です。


ところが、「一見よく出来ている」この「設計会社作成の工事見積書」は、要注意です。

中には、「設計会社作成の工事見積書」内の全ての項目を念入りにチェックしていると、

「この工事は、
なんだろう?」

よく分からない工事が含まれていることもあります。

さらに、時々見かけるのは、

「この工事は、
一体どうやって施工するのだろう?」

建物の規模・計画地・用途を考えると、「明らかに不可能な工事」が含まれていることがあります。

そして、その「明らかに不可能な工事」に、かなり多額の費用が見込まれていることが多いです。

これは、工事見積書を作成した設計会社が、

「金額を水増ししなければ
ならないから・・・

大きな部材で、過大な費用を
見込んで入れておけば良いか・・・」

このような意図で、「適当」ではなく「テキトー」に工事見積書を作成していると思われます。


裁判所は、まだ実行されていない「予定」の工事見積書を証拠・書証として提出されたら、しっかりと精査して、訴訟指揮をとるべきと考えます。

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株式会社YDS建築研究所

東京都千代田区神田神保町三丁目2番地 高橋ビル4F

TEL:03-6272-5572


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