設計会社作成の「明らかに過大な」工事見積と建築裁判〜損害額の根拠となる「工事見積書」〜

query_builder 2025/06/03
コンサルティング
FG140611_109m

筆者は、一級建築士として、建築や不動産に関する紛争や裁判に関する業務も行なっています。

他の紛争・裁判と比較して、「金銭が中心」である事が多いのが、建築や不動産に関する紛争・裁判です。

どんな裁判でも、因果関係とそれを立証する書証・証拠が重要であるのが裁判です。


例えば、建築裁判・紛争では、原告側が建主・建設会社・不動産会社など、いずれの場合でも、原告代理人は、

「A社は、B社のせいで、
〜円の損害を受けました。

その損害の根拠は、この工事請負契約書です!」

このように主張し、損害を立証するための「根拠となる書類」が、裁判所に必ず提出されます。

この「根拠となる書類」に対して、裁判官は、

「この工事請負契約書の
金額が、損害額とピッタリ一致しますね。」

損害額を認める傾向があります。

これらの「損害の根拠となる書類」に記載された金額、またはそれらを合算した金額が「損害額」です。

FG141023_142m

工事請負契約書及び支払い明細があれば、流れは分かりやすいです。

建築裁判では多くの場合、「支払う前の想定される損害」が根拠となり、損害賠償請求が提起されることがあります。

この場合は、「まだ行っていない工事」なので、当然、工事請負契約書は存在しません。


損害賠償請求で重要なポイント

・原告が主張する因果関係・ストーリー

・損害額の根拠となる書証:工事請負契約書や工事見積書


損害賠償請求で最も大事なのは、因果関係と損害額の根拠となる書証です。

因果関係が重要なのは当然ですが、「損害賠償額の根拠」が薄弱な場合、

「なぜ、損害賠償請求する
金額が〜万円なのですか?

それが書面で明示されないと、裁判は進みません!」

裁判官は、裁判を進めてくれない傾向があります。

ここで、設計会社が作成した「工事見積書」が登場することがあります。


原告代理人は、

「B社によって、A社は損害を受けて、
この工事を発注する予定です・・・

この「未来に発注する予定の工事」の見積書は、これです!」

この「設計会社作成の工事見積書」を提出すると、裁判官は、

「損害賠償金額の根拠が、
この書面ですね。」

このように考えます。

そして、裁判官の理解が得られ、原告提訴の審議は速やかに進行します。

FG141008_156m

筆者は、建築紛争・建築裁判の現場で、多数の「設計会社・設計事務所作成の工事見積書」を見ました。

「とにかく、損害賠償額の
根拠となる書類が欲しい・・・」

このように考えるのが、原告代理人弁護士です。

そして、

「書面が重視される」というよりも、「書面を中心として進行する」のが裁判です。

裁判所で、原告と被告の当事者、代理人と裁判官が話し合う場を「期日」と呼びます。

この「期日」において、裁判官は、

「原告の〜の主張に関して、
被告は反論がありますか?」

このように、「裁判の指揮」を採ります。


裁判が進行するにつれて、

「原告の〜の主張は
不合理です!」

「そんなことはありません。
被告の主張こそ不合理です。」

このように代理人同士で、様々なやりとりが行われることもありますが、

「主張は書面にして、
行ってください。」

裁判官の姿勢は「とにかく書面」である傾向が強いです。

FG140612_128m

ここで、損害賠償額の根拠となる「未来の工事の工事見積書」を作成する設計会社は、

「いつも、工事見積のチェックをしていますから、
工事見積書を作成できます!」

このように「工事見積書を作成できる」と考えるようです。

「チェックする」ことと「作成する」ことの間には、巨大な違いがあるはずですが、

「それならば、
設計会社Yさんに、見積書作成をお願いしましょう!」

このように、原告自身または、原告代理人から「見積書作成」を業務として設計会社が受注します。 そもそも、工事に限らず、「見積書」とは「受注する可能性を前提」として作成されるべきものです。

この「工事見積書を作成する」設計会社は、

「私たちは、工事を請け負うことが
できず、請け負うつもりもありません!

でも、工事のことは分かるので、
工事見積書を作成可能です!」

このように考えているようです。


確かに、設計会社や建築士は「工事監理」と呼ばれる「工事現場の監理」を行います。

そのため、「工事のことは、ある程度分かる」のは事実ですが、「工事の設計サイドの面」です。

そもそも、大抵は「週に1回、2〜3時間程度」工事現場を「設計者としてチェック」する建築士。

現実問題として、工事のことを「どこまで理解できているか」は、かなり不透明です。

このように「設計会社作成の工事見積書」は、「かなり怪しい」存在であります。


そして、中には一目見て「明らかに過大」である工事見積書もあります。

「損害賠償額が満額通る
ことは、極めて少ない・・・」

原告代理人は、このように考えています。

訴訟内容にもよりますが、損害賠償額として請求した金額の満額が通ることはなく、高くても70〜80%程度が認められることが多いです。

このため、損害賠償請求を提起する原告側からすれば、損害賠償請求額が「高い方が良い」です。

そのため、この「隠れた意図」を踏まえた設計会社は、

「損害賠償請求の根拠となる
工事見積書だから・・・

少し盛って、高額にしておくか・・・」

こう考えることもあるのでしょう。

このような設計会社の意図を感じることも多い、「不当に過大」な工事見積書も存在します。


この「過大」は、程度にもより、20〜30%程度ならば「可愛げ」があります。

なかには、「倍以上」としか考えられない「設計会社作成の工事見積書」も見受けられます。

「設計会社作成の工事見積書」に対しては、裁判所はその信用性をしっかり評価すべきです。

----------------------------------------------------------------------

株式会社YDS建築研究所

東京都千代田区神田神保町三丁目2番地 高橋ビル4F

TEL:03-6272-5572


----------------------------------------------------------------------

NEW

VIEW MORE

CATEGORY

ARCHIVE

TAG