建築裁判の証拠となる設計会社作成の「無意味な」工事見積書〜因果関係とストーリー〜
これまでに多数の建築裁判や不動産裁判に、建築専門家の立場で関わってきました。
裁判において、最も重視されるのは因果関係と書証・証拠です。
裁判において重視されること
・原告と被告の主張における因果関係やストーリー
・原告と主張が提出する書証と証拠
これは、裁判官や弁護士などの法曹関係者の方にとっては、当たり前のことと考えます。
一方で、一級建築士として裁判に関与する立場の筆者からすれば、因果関係が重要なのはわかりますが、因果関係は、多くは、双方の「主張のストーリー」です。
それぞれのストーリーが 因果関係の「原因」と「結果」を説明します。
文字通り「原因と結果」を説明する因果関係は、双方の書面によるストーリーとも言えます。
「何らかの原因」があったために、「問題となる結果」が発生したのが裁判です。
そのため、「因果関係の重要性」は理解できますが、因果関係を説明するストーリーは、全て「正しいこと」が前提となります。
そのため、原告や被告が主張することに、専門家から見れば、
「これはおかしい・・・
不自然過ぎる・・・」
このように感じることが、沢山あります。
不自然であったり、不合理である事実であっても、それが分からない裁判官は、
「なるほど、
そういうストーリーなんですね。
そのストーリーならば、因果関係は分かりますね。」
原告または被告が主張する「ストーリー」を正しいものとして、認識する傾向があります。
原告と被告にとっては、いわば「戦争」である裁判。
その裁判においては、原告と被告の双方において「多少の嘘」は「やむ得ない」かもしれません。
ところが、この「嘘」が一線を超えて、「多少」ではなく「過大な嘘」であることも見受けられます。
そして、損害賠償額請求の立証を行う必要がある原告側は、多数の証拠・書証を提出します。
損害賠償額の証拠・書証
・工事請負契約書
・工事見積書
・設計図書や仕様書 など
原告側の代理人弁護士は、
「A社は、B社のせいで、
〜円の損害を受けました。
その損害賠償額の根拠は、この工事請負契約書です!」
このように「何らかの書証を元に損害を主張」するのが定番となります。
そして、損害額の根拠としては、工事請負契約書が「最も強い存在」です。
日本における六法
・日本国憲法
・民法
・刑法
・商法
・民事訴訟法
・刑事訴訟法
「六法全書」という言葉がある通り、日本の法律は六法が基本となります。
そして、刑事裁判等は別としても、損害賠償事件などの民事事件では、民法が重視されます。
裁判官は、他の法律よりも民法の重要性が高いと判断する人が多いと感じます。
そして、民法の中でも「契約行為」は非常に重視されるため、契約書は強い存在です。
そして、原告代理人は
「B社によって、
A社は損害を受け、新たな工事を発注せざるを
得ず、この金額を支払いました!
支払い明細は、この書面です!」
このように「実害を根拠」として、主張することが多いです。
「既に支払った」と主張する場合は、その支払明細書も証拠として提出されることが多いです。
このように、「実害=現実に支払った金額」がある場合は、証拠として分かりやすいです。
ところが、裁判においては、「支払う必要があるであろう金額」を損害として請求する場合があります。
この場合、原告代理人弁護士は、
「B社によって、A社は損害を受けました。
A社は、そのために
〜の工事を発注せざるを得ないです。
その工事は、未来に発注する予定ですが、
工事の見積書は、これです!」
このように、原告が建物の瑕疵の修繕などが理由で、「必要である工事の見積書」が登場します。
とにかく、「どのような理由で、いくらの金額を請求したいのか」を明確にする必要がある損害賠償事件。
原告側のストーリーが、ある程度明確で、「明確な金額」が見積書として提示されると、
「なるほど、
この見積書が根拠ですね・・・」
裁判所は、作成された工事見積書を「正しい請求金額」として認める傾向が強いです。
ところが、これらの「未来の工事見積書」は」、建設会社ではなく設計会社が作成することが多いのが実情です。
例えば、原告自身や原告代理人が、「将来発注するかも」という工事を建設会社に相談して、
「A社は改修のために、
将来に御社に工事を発注する可能性があります。
まずは、裁判で損害賠償請求したいので、見積書を作成頂けますか?」
このように、見積作成を打診した、とします。
仮に工事会社が、「未来にするかもしれない工事」の見積書の提出を打診されても、
「将来に「発注するかもしれない」
工事ですか・・・」
相談を受け、見積提出の依頼を受けた建設会社は、
「ということは、当面の発注はない・・・
しかも、裁判に提出されるから、
何らかの責任が発生すると困る・・・」
このように考えるのが当然です。
なんのメリットも感じられない、「未来の工事見積書」は、なかなか建設会社は出してくれません。
そもそも、工事見積書は作成するのに、一定の手間もかかるので、建設会社にとっては、「メリットがない」どころか「デメリットしかない」工事見積書作成となります。
おそらく、多くの建設会社は「発注が不明であり、責任が発生する可能性がある」工事見積書作成を断るでしょう。
「困った・・・
工事見積書を作成してくれる建設会社がない・・・」
すると、裁判の「大事な証拠・書証」である、工事見積を作成する組織がなくなり、原告は困ります。
ここで、登場するのが建築設計会社、設計事務所です。
「ならば、私たち設計会社は工事のことが
分かるので、工事見積書を作成しましょう!」
原告代理人は、工事をしない設計会社の登場に対して、
「設計会社が、工事見積書を
作成出来るのですか?」
こう不思議に思うのが、当然です。
「いつも、工事見積のチェックをしていますから、
大丈夫です!」
ところが、設計会社の中には「自信満々で工事見積書を作成する会社」が存在します。
確かに、設計会社や設計事務所は、工事に関して相見積などで多数の見積書をチェックします。
そのため、「工事見積書がどういう書類か」は十分に把握しています。
ところが、設計会社は、工事見積書を「チェック」はしますが、「作成」は難しいのが現実です。
そもそも、設計と工事は強い関係がありますが、「全然別の世界」です。
そして、「工事を請け負わない」設計会社が工事見積書を作成して、
「はいっ!
私たちが作成した工事見積書です!」
原告や原告代理人に提出します。
設計会社は、この「見積書作成業務」に対して、相応の報酬を得るのでしょう。
こうして、設計会社が作成した工事見積書は、到底現実に即した見積書ではないのが実情です。
ところが、この「設計会社作成の工事見積書」は、「工事見積書」の体裁を成しているため、
「この工事見積書は
書証として、妥当ですね!」
裁判官は、証拠・書証として認めるケースが、ほとんどです。
プロから見れば「イカサマ」の工事見積書でも、裁判では「正しい書類」として扱われます。
このような「偽装」とはいかなくても、少なくとも「問題がある書類」は裁判で査定すべきと考えます。
株式会社YDS建築研究所
東京都千代田区神田神保町三丁目2番地 高橋ビル4F
TEL:03-6272-5572
NEW
-
2026.08.17
-
2026.07.30逆転完全勝利した裁判...前回は、私たちが建築裁判で完全勝利するコンサル...
-
2026.07.14逆転完全勝利した裁判...前回は、私たちが建築裁判で完全勝利するコンサル...
-
2026.07.07逆転完全勝利した裁判...今回は、建築裁判の損害賠償請求事件に対して、私...
-
2026.06.03「全面ルーバー建築」...デザインの要素として、モチーフにされることが多...
-
2026.05.29逆転完全勝利した裁判...前回、弊社の建築コンサルティングによって、大勝...
-
2026.05.22コンセプト・ドローイ...箱がズレて重なり、内外にヴォイドをもつOrganic C...
-
2026.05.19逆転完全勝利した裁判...今回は、弊社の建築コンサルティングによって、大...
CATEGORY
ARCHIVE
- 2026/081
- 2026/073
- 2026/061
- 2026/056
- 2026/044
- 2026/033
- 2026/024
- 2026/015
- 2025/129
- 2025/117
- 2025/1012
- 2025/0911
- 2025/0810
- 2025/0711
- 2025/0612
- 2025/059
- 2025/0410
- 2025/039
- 2025/0210
- 2025/016
- 2024/126
- 2024/117
- 2024/106
- 2024/0912
- 2024/088
- 2024/079
- 2024/066
- 2024/0511
- 2024/0413
- 2024/0311
- 2024/025
- 2024/0112
- 2023/1213
- 2023/117
- 2023/1011
- 2023/0915
- 2023/088
- 2023/0712
- 2023/0611
- 2023/0512
- 2023/0427
- 2023/0322
- 2023/0210
- 2023/018
- 2022/1210
- 2022/1117
- 2022/1027
- 2022/0926
- 2022/0824
- 2022/0722
- 2022/0622
- 2022/0527
- 2022/0430
- 2022/0332
- 2022/0236
- 2022/019
- 2021/122
- 2021/111
- 2021/101
- 2021/091
- 2021/081
- 2021/071
- 2021/061
- 2021/051
- 2021/041
- 2021/031
- 2021/021
- 2021/013
- 2020/105
- 2020/065
- 2020/051
- 2020/026
- 2020/014
- 2019/121