クリニック増築設計・計画:設計プロセス 4〜建主の要望と建築基準法〜|東京の建築設計
発電機(北越工業)
消防署で「絶対に認めない」と言われてしまった「地下タンク」建築。
まずは、地下タンク建築を要望している建主であるH医師に報告します。
「消防署での協議で、
「地下タンク」建築は不可となりました。」
「えっ、なんで?
それは、困る!」
気持ちは分かります。
「建築したい」という建主と、「建築不可」の消防署の間に挟まれました。
「なんとか
ならないの?」
「私も、かなり
強く主張しましたが、
やはり、
「地下タンク」は非常にハードルが高いです。」
「そうかあ・・・」
とてもガッカリするH医師。
行政の権限は、「絶対」なので、許可が降りなければ、計画は進みません。
発電機設置計画:計画前(YDS建築研究所)
「軽油発電機設置も、
かなり難色を示されています。」
と伝えると、
「えっ、そうなの?」
次々に「自分の希望」に対して「立ちはだかる壁」に対して、
「なんで、
こうなるの?」
少しイライラした雰囲気のH医師。
これは、発注者側の論理で、私はベスト尽くしていますが、消防署の判断もわかる気もします。
「軽油発電機設置は、
私が責任持って、なんとか消防署の了承を得ます。」
「頼むよ!」
「軽油発電機設置に関しては、
建築審査課との協議も必要です。」
「えっ、そうなの?
建築は関係ないんじゃないの?」
発電機という「モノを設置するだけ」は、建築とは無関係に思われる方も多いかもしれません。
蚕糸の森アパートメント(YDS建築研究所)
そもそも建築・建物とは、なんでしょうか。
建築・建物は、いわゆる戸建住宅・マンション・幼稚園などで、建築基準法という法律に従う必要があります。
他にも、消防法や各種自治体の条例等にも従う必要がある場合もあります。
他の法規もあるのですが、なんといっても「建築基準法が第一」となります。
建築基準法という法律がある以上、「建築物とは何か?」という定義が必要です。
建築物(建築基準法 第2条)
・土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの
・附属する門若しくは塀、観覧のための工作物
・地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設
・建築設備
少し簡略化していますが、法律の定義は上記のとおりです。
モノであっても、基本的に「屋根があれば建築」となります。
その屋根とは、小さな物置などであっても、建築基準法上「屋根」とみなします。
豊島の家(YDS建築研究所)
「物置」や「発電機」であっても、相応の箱である以上は「屋根がある」とみなす建築基準法。
そのため、「物置や発電機などを敷地内に置く」のは、厳密にいうと「増築」に相当します。
建築基準法では、増築申請の基準に関して、下記の通り定めています。
建築等に関する申請及び確認(建築基準法 第6条)
・建築主は、建築物を建築しようとする場合、工事に着手する前に、建築主事の確認を受けなければならない。
みそら幼稚園(YDS建築研究所)
建築をするのは、行政の許可である「建築確認」が必要です。
現在は、ほとんどの場合において、民間である指定確認検査機関が行います。
基本的に、事前申請である「建築確認」が必要ですが、下記の場合に限り、増築等は申請不要です。
建築確認の増築・改築・移転申請の基準(建築基準法 第6条)
・防火地域及び準防火地域外
・床面積の合計が十平方メートル以内であるとき
富士見幼稚園(YDS建築研究所)
まずは、「防火地域及び準防火地域外」が条件です。
「防火地域」や「準防火地域」は、東京23区などの都市部は、ほとんどの場合該当します。
地方都市や街から離れた地域は、対象外となることが多いです。
そして、「床面積の合計が十平方メートル以内」は、だいたい「6畳の部屋」程度以内の面積となります。
つまり、都市部において、敷地内に「六畳のサイズを超える物置」を設置するには、厳密には「増築申請」が必要です。
また、「増築の建築確認申請」は、既存建物の状況次第では、かなりハードルが高いのが現実です。
そのため、六畳を超える「大型の物置」を都市部の敷地内で設置している多くの場合において、「未申請」となります。
厳密には「建築基準法違反」となりますが、この点は行政もわかっていて、あまり問題にはされないのが現実です。
私たちは、法律遵守の姿勢で、業務を行なっております。
今回、消防署の指導次第では、「建築・増築」になる可能性があります。
少しずつ、しっかりと、着実に計画を進めてゆきました。
株式会社YDS建築研究所
東京都千代田区神田三崎町2-20-7 水道橋西口会館6F
TEL:03-6272-5572
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