「設計施工」禁止の欧米とOKの日本〜「大工文化」の日本〜|法律違反と裁判1

query_builder 2025/08/29
コンサルティング
YDS

筆者は、建築裁判・不動産裁判のコンサルティングの業務も行なっています。

東京地裁のデータによると、世の中の裁判の中で建築裁判・不動産裁判の割合は大きいです。

そのこともあり、これまでに大小数十件の建築裁判・不動産裁判に関わりました。

建築裁判の多くは「損害賠償裁判」であり、一言で言えば「金銭トラブル」です。

一品生産の建築においては、自動車などの工業製品の売買と異なり、金額に対する認識のズレが起きます。

例えば、集合住宅(マンション)の建築工事においては、まずは設計者が設計図書を作成します。

その上で、多くの場合は数社の建設業者の相見積もりとなります。


設計図書を作成した建築士・設計者は、まず工事業社から見積書を取ります。

そして、数社から工事見積もりを設計者が取り、設計者は見積書の査定を行います。


その上で、建築士が「ベストな建設会社」を選定し、

「工事見積書を査定し、
技量や実績を考えると、

X社に工事を任せるのが良いと考えます。」

建主に「建設会社の推薦」を行います。


多くの場合は、設計者が推薦する工事請負業社に決まります。

ここで、設計のプロ=設計者、工事のプロ=工事業社にとっては、設計・工事内容が重要ですが、建主は、

「設計や工事のことは
全然分からないが、

とにかく、金額が重要!」

建主にとって最も重要なことは「工事金額」です。


大規模建築においては、建主は借金して建築することが多いです。

個人・法人のいずれにしても、数億円〜の借金を抱えることは重大であり、建主にとっては、「予算内に収めること」が至上命題となります。


そして、「設計内容と工事見積がセット」で工事業社に発注されます。

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第三者として設計者が入る場合、このような「工事内容+工事金額の流れ」となります。

本来、「設計内容が確定しないと、工事費用が決まらない」のは当然です。

ところが、多額の費用がかかる建築においては、「金額が優先」となることがあります。

これは、「建主側の論理」からすれば当然であり、

「なんと言っても
予算内でなければならない!」

このように考える建主もいるのが現実です。

この時、「概要の設計図書を元に相見積」して、先に工事金額を確定する場合があります。


「金額優先で業者決定」の場合は、ほとんどの場合「設計施工」となります。

これは、工事業者側の論理からすれば、

「金額が先に決まっているので、
「設計者が別」では混乱する。

設計と施工を我が社が
管理して、金額も管理するのだ!」

「設計施工体制」によって、工事金額の管理をすることになります。

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中世には「建築家」という職能が明確にあった欧州と違い、我が国は、「建築家」がいませんでした。

建築は、「大工が行うもの」であり、「大工が設計者を兼ねた」のが我が国の歴史です。

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我が国では、明治までは「設計図書は大工が作成し、施工も大工」でした。

この歴史において、日本の建築業界は形作られてきました。

そして、明治期を迎え、「建築家」の職能づくりのために、明治新政府は欧米を見習ったのでした。


日本と欧米の建築業界の認識

欧米:「設計者=建築家と施工者=ビルダーは別」という認識


日本:「設計者=建築家と施工者=ビルダーは同じでも良い」という認識


現代でも、「設計者と建設会社(ビルダー)は分業」であることが明確に法律で定められている欧米。

これに対して、日本では、一部の大規模建築以外は「設計施工(設計者と建設会社は同一)OK」です。

この「設計も施工も同一会社が行う」ことが平然と行われている日本。

本来は、小さな分譲住宅などを除いては、「設計と施工は別であるべき」です。

そして、建築基準法などでは「設計者と施工者の管理(監理)体制」が明確に謳われています。

ところが、「別」であるはずの設計者と施工者が「同一でもOK」という、日本の曖昧路線。

この「設計施工体制」は建築裁判においても、多くの問題を生んでいます。

次回は、具体的な「設計施工の問題」の話です。

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