建築訴訟・建築裁判を上手く解決する戦い方〜解決実績が多い一級建築士の戦略〜|建築裁判と戦略3
建築裁判において、特に重要である工事請負契約書や見積書。
損害賠償裁判となるケースが極めて多い建築裁判では、裁判官は、
「原告が要求する損害賠償額の
根拠はこれですね・・・」
損害賠償額の根拠として、「最も分かりやすい」存在であるのが工事請負契約書です。
多くの場合、原告代理人は、
「これだけの金額を原告は支払ったが、
被告は大きな瑕疵がある建物を建てた!
そのため、支払った金額は
損害となるので、賠償求める!」
このように主張することが多いです。
支払った金額が「損害」となってしまうため、「実害が発生している」ことになります。
この「損害の立証」として、「支払い伝票」等の「お金の流れ」の資料も提出されます。
これら「支払い伝票」は単なる「支払った事実」を示すのに対して、「損害の立証」としては、工事請負契約書は強いです。
かつて、コンサルティングした裁判を傍聴した際、契約書を盾に取った代理人は、
「この工事請負契約書さえあれば、
絶対に勝てる!」
このような極めて強い姿勢でした。
民法上「契約行為」は極めて重要であり、口頭の「諾成契約」も契約の一つと見做されます。
この超重要である契約が、最も記録として分かりやすい「双方の書面」である契約書。
このため、建築裁判に関わらず、裁判において双方の押印がある契約書は、極めて強い存在です。
契約書を前にすると裁判官は、
「契約書に記載された金額を
原告と被告は納得して押印したんですよね・・・」
このような姿勢と心証を持つ傾向があります。
原告と被告が「納得して押印した」書類であるはずの工事請負契約書。
この工事請負契約書が登場して、多くの場合で原告は契約書を「損害の根拠」とします。
いわば「裁判の王様」的存在が契約書です。
このような建築裁判においては、原告代理人の弁護士は意気揚々と乗り込んでくる傾向があります。
代理人は、
「絶対に勝てる『勝ち筋』の裁判だ!
とにかく、事実をもとに
押せば良いのだ!」
裁判を傍聴する際、原告代理人の口調や姿勢から、このような雰囲気を感じることがあります。
こうなると、被告側は「明らかに押された」立場となり、苦しい戦いとなります。
ここで重要なのは「時系列の前後関係の精査」です。
建築裁判においては、ほとんどの場合「時系列表」の提出が求められます。
ほとんどの建築裁判においては、裁判官から、
「書面も大事ですが、
時系列表を作成して提出してください。
そして、原告被告間で
双方で記入して整理してください。」
このような訴訟指揮が行われます。
原告と被告は代理人含め、「事件の前後関係をほぼ全て把握」しています。
一方で、裁判官にとっては、
「事件の内容は書面で理解できるが・・・
時系列の流れは重要だ」
このような状況であり、時系列表がないと「事件の流れと全容の理解」が難しいのが裁判官です。
ここで、工事請負契約書を最大の立証根拠としている原告側代理人は、
「時系列表の流れはこれです!
工事請負契約書に記載された
日が契約日であることは明白です!」
このように強く主張する傾向があります。
さらに、
「そして、その前後の
打ち合わせ議事録はこれです!
さらに、当時にやりとりされた
メールがこれです!」
打ち合わせ議事録もまた「分かりやすい書面」であり、日時がはっきりと明記されています。
そして、「何をどう話されたか」が明記されているので「流れが分かりやすい」です。
この議事録に関しては、双方のサインがあるのが望ましいですが、
「原告は被告にメールで
送ってあります。」
このように、原告が作成して被告にメールで送っていると、
「なるほど。ならば、
被告は承認しているのですね。」
このように「メールを受けた」被告は「承認した」と認定される傾向が強いです。
さらに、「日時と内容」がハッキリ記載されているメールも証拠として強い存在です。
これらのメールを見た裁判官は、
「メールでこんな
話があったんですね・・・」
こうなると、ますます「契約書を根拠とする」原告が強くなります。
特に建築工事においては、工程表が度々交付されます。
この工程表は「工事のみ」ではなく、「設計から工事のフロー」も重要です。
「いつ完成を目指すか」が極めて重要な工事において、「全体の流れ・フロー」は最重要事項です。 そして、これらの工程表は「度々更新されて、変更される」傾向があります。
そのため、建築裁判の際には工程表をしっかりと精査することが大事です。
工程表の精査は、時系列の流れの精査につながり、
「ここのあたりが、工程表と
時系列表の整合性がないです。」
このような「整合性がない」ことが登場することが多々あります。
このような指摘を私たちがすると、弁護士の方からは、
「なるほど。この工程表に記載された
前後関係と、時系列が異なるのですね・・・
このあたりを
もう少し精査できますか?」
このように要請を受けることがあります。
「ここが食い違うと、こちらの
話の整合性もなくなります。」
このように「どこか不整合がある」と他にも「不整合が飛び火」する傾向があります。
裁判という戦いにおいて、「時系列表の精査」によって「時の流れを味方につける」のが良いでしょう。
建築裁判の当事者、代理人の弁護士の方は、早期に経験豊富な一級建築士に相談することを強くお勧めします。
株式会社YDS建築研究所
東京都千代田区神田三崎町2-20-7 水道橋西口会館6F
TEL:03-6272-5572
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