民民不介入で「いつも他人事」の行政〜「日影規制違反」の違法建築物への具体的対応〜|建築裁判・日本の建築と都市問題

query_builder 2024/05/17
コンサルティング
YDS

建築基準法に明確に違反している「違反建築物」がたくさん存在する日本の都市空間。

東京都内でマンションを設計した際、隣地に違反建築物がありました。

計画地に関する法規を調べた上で、現地を訪問した際に、

「あの建物は

法律違反だな・・・」

と、その建物が「日影規制(高さ規制)」に大きく違反していることに即座に気付きました。

日影規制は少し専門的内容ですが、建築設計に熟練すると「大体の感覚」が分かります。

隣の建物が建築基準法違反であっても「関係ない」のが実情です。

そこで、計画地の建築設計を進めました。

YDS

そして、建主に設計案の説明をすると、

「このあたりは、
なぜ建たないのですか?」

と、建主は建物の角のあたりを指差しました。

続けて建主は、

「同じ4階建ての隣の
建物は、このあたりも建っているのですが・・・」

と怪訝な表情をしていました。

「隣の建物」ならば「同一の法規制」になるであろうことは、素人の方でも分かります。

必ずしも「隣と同じ」ではありませんが、「計画地と隣地の法規制は概ね同一」であることは確かです。

そこで、建主に説明するために、

「実は、隣の建物は、
日影規制に明確に違反しています。」

と事実をお知らせしました。

YDS

すると、建主は、まさか自分の土地の隣地に「違反建築物がある」ことに驚愕して、

「えっ!
違反しているんですか?」

と、大変驚きました。

そこで、

「私たちは、建築基準法等の法規制に
完全に適合する設計をしますので、ご理解ください。」

とご説明し、続けて、

「この建物は、しっかり容積率を
満たしており、ここはテラスになります。」

と設計案を説明しました。

「それは
良いですね!」

と建主は仰いましたが、

「・・・・・・」

違反建築物の存在に「納得がいかない」表情をしていました。

YDS

建主はどうしても気になるようで、

「どの程度、
隣の建物は違反しているのですか?」

と聞かれました。


そこで、私たちは日影規制を簡単に説明して、「違反の程度」を説明しました。

日影規制は一般の方には、なかなか理解しずらい法規制です。

そこで、「日影の長さや時間」を簡単にご説明しました。

「隣地建物の違反」は計画地に「甚大な悪影響」はもたらしませんが、「日影の影響」が多少はあります。

建主は、

「これは大変困ります・・・」

と苦渋の表情です。

そして、

「このことは行政に指導して
もらいたいので、私が言いに行きます!」

と仰いました。


建主は、自らの意思で「隣地の建築基準法違反」を役所に言いに行くことになりました。

こうした「法律違反」を私たち一級建築士が「第三者として」通報しても、ほとんど効果はありません。

一方で、土地の所有者にとっては、隣地の違反建築物の存在は「実害をもたらす」ため、幾分は効果がありそうです。

YDS

「ただ違反」では仕方ないので、「どのように違反しているか」の資料を作成しました。


建築基準法第九条:違反建築物に対する措置

特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。


建築基準法第九条には「違反建築物に対して行政が是正命令を下せる規定」が明記されています。

これは、当然のことであり「違反の程度」にもよりますが、違反建築物は存在してはいけないのです。

YDS

役所の建築指導課(審査課)に違反建築物のことを伝えに行った建主は、

「隣の建物の、この辺りが
日影規制を大きく違反しています!」

と、かなり強く担当者に伝えたようです。

ところが、役所の担当者は、

「建築基準法に違反しているかも
知れませんが・・・

役所は民民(民間)不介入なので、
何も言えません・・・」

と「関係ない」という姿勢です。


こう言われたものの、建主はすぐに引き下がらず、

「私たちの土地に新たに
マンションを建てるのですが、日影が多いのです!

これでは、困るので、
役所から是正指示を出して下さい!」

と強く主張したものの、

「繰り返しになりますが、
役所は『何も言えない』のです・・・」

と役所の担当者の「何もしない」と言う姿勢・回答は変わりませんでした。

YDS

裁判を起こせば別かも知れませんが、裁判には多額の費用と時間がかかります。

結局「泣き寝入りせざるを得ない」状況になった建主。

こういうことが「当たり前」である日本の法規制は、おかしいと思います。

違反建築物は、「除却」とまでいかなくても「何らかの是正指導」はあるべきでしょう。

例えば、違反が明確であり、ある程度の実害が見込まれる場合は、

「違反部分を、〜までに法に
適合するよう改修せよ。

この通告に従わない場合は、罰金を課す。」

と役所は是正命令を出すべきだと考えます。

民事上の罰則となるかは別としても、最低限「罰金程度は払わせるべき」と考えます。

YDS

違反の程度にもよりますが、「実害がある」と考えられる際は、一度経験豊富な一級建築士に相談するのが良いでしょう。

そして、即裁判とまでいかなくても、「実害の程度」によっては、「違反建築物の所有者」に対して、何らかの主張をすべきと考えます。

この時に大事なことは、「自分たちがしっかりと建築基準法に適合していること」です。

相手側に「建築基準法を指摘」した際に、自分たちが悪気でなくても「建築基準法違反」をしている場合は、相手側から逆に苦情を言われる可能性があります。

そのようなことがないように、「万全を期す姿勢」は大事です。

いずれにしても、相手の「法律違反の程度」が大きい場合は、はっきりと主張するのが良いですが、行政は全くと言って良いほど動いてくれません。


一度設計図書等をしっかりまとめ、状況によっては、現状の測量等を実行する必要がある場合があります。

その上で、具体的に建築基準法や設計・施工に非常に詳しい一級建築士に相談するのが良いでしょう。

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株式会社YDS建築研究所

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TEL:03-6272-5572


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