「存在しない書類」が登場する建築裁判〜偽造書類への対応〜
「偽造したとしか考えられない」書類が多数証拠として登場するのが裁判の現場です。
この「偽造かどうか」の真実は「書類を作成した本人しかわからない」かも知れません。
原告あるいは被告の立場であれば、
「自分の立場を
守るために書類を偽造するか・・・」
「そして、その偽造書類を
出せば、こちらに有利になるはずだ・・・」
と考えるのは、一面「止むを得ない」かも知れません。
裁判という「戦争」に巻き込まれている当事者からすれば、
「『勝てば官軍、
負ければ賊軍』なのだ・・・」
という気持ちになることもあるでしょう。
本来許されるべきではない「偽造書類の裁判・裁判所への提出」。
この「偽造書類の作成」が、原告・被告の当事者であれば、
「やってはいけないことだろうが、
やるしかない・・・」
となってしまうかも知れません。
これらの偽造書証に対しては、裁判官が、
「これは
嘘っぽいな・・・」
と判断したら、却下してくれれば良いと考えます。
ところが、裁判では「提出された書証は正しい」と扱われる傾向が強いです。
以前、ある建築裁判で、
「この契約書は、建設業法違反で
偽造した証拠です!」
「この工程表も辻褄が合っていない、
合理性を欠く書類です!」
と主張しても、裁判官は、
「ふ〜ん、
そうですか・・・」
「そう主張するのは
別に良いですが、「偽造」と認定するのはちょっと・・・」
という感じで、なんとなく「うやむや」になりました。
それでも、意見書だけでなく弁護士の準備書面でも主張してもらいました。
少ししつこいくらい、緻密に分析して何度も主張した結果、裁判官は、
「確かに、この書類は
ちょっとおかしいかもしれない・・・」
と、やっと「書証の不自然さ」を「少し理解してくれた」ようになり、裁判は大きく有利になりました。
契約書・見積書・設計図書・工程表で様々な「偽造」が登場する建築裁判。
「存在しないはずの書類・書証」が登場することもあります。
その書類・書証を一目見て、
「こんな書類は
建築・建設業界には存在しない!」
と気づきました。
施工会社・設計者・建主の三者が関わる建築においては、相互で「報告書」などが提出されます。
例えば、設計者が工事監理を完了した時、「工事監理報告書」を建主に提出する義務があります。
この「工事監理報告書」には雛形があり、「適切に工事監理を行なった」証拠として重要です。
施工会社は工事を完了した時に、膨大な書類を建主に提出します。
中でも重要な建主への書類は「引き渡し証」です。
工事中は、建物の所有権は施工会社にあり、この書類があって初めて「建物は建主のもの」となります。
このように「報告書」や「〜証」が多数建築では登場します。
ところが、ある建築裁判では、施工会社と設計者が建主に提出した「〜届」が登場しました。
「〜届」は、設計者・施工会社が役所など「お上」に届け出る書類です。
民間同士の施工会社・設計者・建主は「対等な関係」なので「〜届」は絶対にありません。
「この『〜届』は
建築・建設業界には存在しません!」
と意見書等で主張しても、裁判官は、
「そう言われても、
建築・建設業界のことは知らないし・・・
現に「存在する書類」なのだから、
「存在しない書類」とは言えない・・・」
という感じで、またもや「うやむや」になりました。
関係者にとっては、「戦争」でもある大事な裁判の場。
そこにおける「書証・証拠の真偽」は、第三者機関などが関わって慎重に判断されるべきと考えます。
それにはコストと時間がかかりますが、極めて大事なことだと考えます。
「書証・証拠の真贋性・妥当性」は極めて大事であるはずですが、裁判所は「書証・証拠は正しい」と扱う傾向があります。
建築裁判の当事者・代理人の弁護士の方は、早期に経験豊富な一級建築士に相談することを強くお勧めします。
そして、建築裁判をしっかり有利に持ってゆく戦略を立ててゆくことが望ましいでしょう。
株式会社YDS建築研究所
東京都千代田区神田三崎町2-20-7 水道橋西口会館6F
TEL:03-6272-5572
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