建築裁判における瑕疵一覧表のまとめ方〜「あるべき施工とその根拠」の問題点〜|東京の建築設計

query_builder 2020/02/25
コンサルティング
YDS建築研究所

工事の瑕疵を主張する建築裁判において、裁判所から「瑕疵一覧表」の提出を求められることがあります。

これは「瑕疵を一覧にして、論点を明確にしたい」と裁判官が考えているからと考えます。

書証や証拠をもとに裁判を進める裁判官。

訴状や準備書面においては、一級建築士が作成した「調査報告書」が根拠になっているケースが多いです。

これら「調査報告書」を作成する一級建築士は、瑕疵を見つける点においてベテランです。

そのため、これら調査報告書と準備書面を見れば「何が瑕疵で、どういう問題になっているか」は一目瞭然です。


一方で、裁判を進行する裁判官の頭には「どのような問題がどの程度あり、原告と被告の間で、どこで折り合うのがベストか」があります。

裁判においては、判決まで至るケースは比較的少なく、多くの場合は裁判所から提示された和解案をベースに和解します。

裁判官としては、「和解案を作成する」ためには「そもそも、どのような瑕疵があるのか」を明確に認識し、個別に「どの程度損害を認めるか」を判断します。

そこで裁判官にとって必要不可欠な書類が「瑕疵一覧表」となります。

この瑕疵一覧表を見ながら、原告・被告双方の書面・書証をもとに、各瑕疵の項目をチェックしてゆきます。

おそらく、瑕疵一覧表において、各瑕疵を個別に評価して、ランク付けしていると考えます。

いわば、裁判官が「裁判を採点するために必要である」面が強い瑕疵一覧表。

裁判所によっては、提出を強く要請・あるいは義務付けていることもあります。


この瑕疵一覧表には、調査報告書や訴状で記載した瑕疵を明確に記載する必要があります。

ここで大事なことは、出来るだけ簡潔に瑕疵の内容を記載することです。

簡潔でないと、裁判官は「瑕疵一覧表を読んで理解する」のに時間がかかり、扱いにくい書類となってしまいます。

瑕疵一覧表に記載する瑕疵は、明確な瑕疵を端的に示すことが大事です。


ここで、問題となるのが「あるべき施工とその根拠」です。

設計者の視点から考えると、そもそも「あるべき施工」というのは「ない」ことが多いのが実情です。

ここで「あるべき施工」の根拠となることが多いのが、日本建築学会などの諸学会が作成する「指針」やメーカーの「基本納まり図」です。

ところが、「指針」は文字通り「指針」でしかなく、建築基準法等に明記された事柄ではありません。

また、メーカーの「基本納まり図」は原則として依拠した方が良いですが、設計者・施工者の考え方次第では、「ある程度変更しても良い」内容です。

建築の工事や材料には「認定書に基づく施工」があり、「認定書」の仕様・工事の仕方には従う必要があります。

一方で、「指針」や「基本納まり図」は文字通り「基本的事項」に過ぎず、具体的な設計や工事の方法は主に建築士・設計者が判断することです。

「こうした方が良い」という「指針」は、確かに従った方が良い面がありますが、それもまた意匠・デザインと比較して、建築士・設計者が判断すべきことと考えます。

このように、「あるべき施工とその根拠」には不明瞭な点が多く、「不明瞭な根拠で裁判が進行する」こともあります。

相手方から調査報告書・瑕疵一覧表・「あるべき施工とその根拠」が提示された時には、早期に経験豊富な一級建築士に相談し、意見書にまとめることが、自分のクライアントを守る最も有効な手段です。

----------------------------------------------------------------------

株式会社YDS建築研究所

東京都千代田区神田神保町三丁目2番地 高橋ビル4F

TEL:03-6272-5572


----------------------------------------------------------------------

NEW

VIEW MORE

CATEGORY

ARCHIVE

TAG