クリニック増築設計・計画:設計プロセス 6〜建主の「建築への思い」を具体的設計案へ〜|東京の建築設計
クリニックを経営する「大地震などの非常時に患者を守りたい」という意志の強い思い。
メーカー制作の軽油発電機を「設置するだけ」ですが、少量危険物貯蔵庫となるので、消防署との協議が重要です。
今回設置する予定の発電機のサイズは、それほど大型のものではありませんでした。
そして、発電機は重量が重いですが「移動可能」です。
「移動可能」であるため、「建築の対象となるかどうか」も考え方によるかもしれません。
今回は、「移動可能」であっても「据え付ける」ため、「建築に該当する」と判断されました。
建築確認の増築・改築・移転申請不要の基準(建築基準法 第6条)
・防火地域及び準防火地域外
・床面積の合計が十平方メートル以内であるとき
さらに、防火地域内における「増築」にあたる可能性があるため、慎重に設計を進めてゆきました。
本来であれば、設計が先で「指定確認検査機関や消防署との協議は後」となります。
今回は「敷地内に発電機を設置する」計画のため、設計案より「既存の状況への建築」が問題です。
軽油という危険物を伴うことから、今回はまず消防署との協議を進めました。
基本的に、消防署は「危険物設置」に対しては非常に審査が厳しい視線になります。
これは、「消防活動の最前線」に立つ消防隊員の方から見れば、
「軽油等の危険物から
発火して火事になる可能性がある・・・
火事の原因になりかねない
事象には、当然厳しくなる・・・」
少量であっても「危険物設置」に対して、厳しい姿勢になるのは当然のことです。
クリニックを経営する医師は「非常時に電気が失われた際に、患者たちを守る」ことを考えていました。
消防署の予防課へ向かい、協議を開始しました。
「非常時への対応のため、
軽油発電機を設置したいと考えます。」
当初、消防署の方の対応は、
「このような軽油発電機の
設置は認め難い。
新築での計画ならば、
まだ良いが・・・
既存の建物・敷地に「後から設置」となると
全然話が違う!」
確かに「新築の際」には、「まっさらな状況での計画」なので、様々なことが詳細に議論できます。 一方で、既存の建物、しかも「少し古い建物」の場合、新築時と状況が異なっていることが多いです。
そのため、「状況を完全に把握」することは、「極めて詳細な調査」をしない限り難しいです。
市街地のある程度の規模の建物に「何か建築行為をする」のは、基本的に「増築」という扱いになり、元の建物と一体化して扱われます。
「やはり、この
発電機設置計画は認められないな・・・」
「万が一の際の危険」を重視する消防署は、この計画に対して、「許可を下ろせない」という姿勢を明確にしました。
そこで、なんとか状況を打破したいと思い、こちらから提案をしました。
「発電機を『不燃の壁面で囲う』
などの計画ではいかがですか?」
こう提案したら、
「スチールやアルミなどで
壁面を作る計画か・・・」
消防署担当者の方は、少し考えてくれました。
「・・・・・
ちょっと、上司と
相談してくるから、お待ちください・・・」
どうやら、少し可能性が見えてきました。
少し待っていると、
「計画次第では、
『発電機を不燃材で囲う』で認めましょう。」
状況を打破できる見通しが出来てきました。
まだ「許可する」ではなく「計画次第」なので、綿密な設計・計画が必要です。
「それでは『不燃材で囲う』計画の
検討を進めて、また協議に来ます。」
これで、「計画実施への大事な一歩」が踏み出せました。
「壁で囲う」というのはシンプルですが、発想転換によって法令をクリアする道が開けました。
次に、増築に関する審査を建築指導(審査)課と協議します。
株式会社YDS建築研究所
東京都千代田区神田三崎町2-20-7 水道橋西口会館6F
TEL:03-6272-5572
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