骨太な軸組が美しい松本城〜建築基準法「耐火性能」の強い制約・戦国時代に木造で建築した城〜|松本城2
堀に浮かぶ優美な天守閣で有名な松本城。
堀は、とても綺麗で、石垣や建物がよく映えています。
同時期に、松本城に近い上田城を訪問しましたが、松本城と上田城の堀の水はだいぶ異なります。
日本では、全国各地で城があり、観光名所として各自治体が強く推しています。
日本の歴史のシンボルでもあり、戦国時代のファンも多いため、城はとても人気です。
実は、多くの城は、戦後に再建された鉄筋コンクリート造です。
上の名古屋城も、鉄筋コンクリート造ですが、2025年6月現在、耐震性の欠陥で天守入城不可です。
元々は、木造で建築されていた城ですが、戦後再建の場合には、鉄筋コンクリートとなった理由。
その理由は様々考えられますが、まずは、城のような大規模建築は鉄筋コンクリートの方が作りやすいことです。
近年、大規模木造の技術が高まり、大きな建物を木造で作ることは可能です。
「そもそも、昔は木造で建てることが出来たのだから、
現代の技術ならば、木造で
建てることは当然可能なのでは・・・」
このような声が聞こえてきそうです。
例えば、戦国時代は、概ね1550年頃から1615年頃で、400年以上前です。
この400年以上前の時代に「木造で作られた」のが、様々な城郭建築です。
そのため、現代、構造的には、城郭建築を木造で建てることは十分可能です。
実は、現代において、城郭建築が鉄筋コンクリート造が多い最大の理由は、建築基準法の制約です。
住宅などの小規模建築とは異なり、大規模建築は、耐火性などの安全性を求められることが多いです。
木造だと、耐火性能はありません。
火がつけば、燃えてしまう可能性が高い木造建築には、耐火性能はありません。
その一方で、「耐火性能を持つ木造建築」が様々考えられています。
「耐火性能を持つ木造建築」の一例
・柱や梁などを石膏ボード等の耐火性能を持つ材料で覆う
・「燃える」ことを前提に、「一定時間燃えても、構造性能を確保」出来る燃え代設計
上のような考え方によれば、大規模木造建築による城郭建築は、十分可能です。
「柱や梁などを石膏ボードで
覆ってしまったら、木造らしくないのでは・・・」
このような声もあると思われます。
柱や梁などを石膏ボードで覆うと、「木造らしさ」は完全に失われます。
そこで、「石膏ボードの上にさらに木材で覆う」ことで、「木材らしさ」を表現することは可能です。
ただ、「石膏ボードの上にさらに木材で仕上げ」は、設計者・建築士としては、気が乗らない面があります。
そして、「燃え代」設計でも、城郭建築の木造建築は可能ですが、火災時の安全性に問題があります。
大勢の観光客が訪れる城郭建築では、安全性は最重要です。
そのため、結局は「鉄筋コンクリート造による再建築」が選ばれる傾向があります。
大人気の松本城は、予約しても並ぶので、時間の余裕を持っていただくことをお勧めします。
内部では、美しさを感じさせる「骨太な柱・梁の軸組」が楽しめる松本城。
ぜひ、訪問して見てください。
株式会社YDS建築研究所
東京都千代田区神田神保町三丁目2番地 高橋ビル4F
TEL:03-6272-5572
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